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グレアムの7つの基準で保有株を採点する|採点表つき

by @kabueng55

グレアムの7つの基準 - 保有株採点表と日本株での確認方法の図解

グレアムの7つの基準は、すべて数値で判定できる唯一の古典的銘柄基準です。この記事では、7基準それぞれの書籍の閾値・日本株での確認方法・データの見つけ方を一覧化し、保有株を7点満点で点検する手動採点表に落とし込みます。過去局面での記入例1銘柄と、「現代の日本株には厳しすぎるのでは」という論点まで扱います。

7つの基準とは?——一覧表で全体をつかむ

7つの基準とは、『賢明なる投資家』でグレアムが防衛的投資家向けの銘柄選定条件として示した数値基準です(全項目とも書籍由来)。まず全体を一覧します。

グレアムの7つの基準一覧表

#基準書籍の閾値出典ラベル日本株での確認方法データの見つけ方機械判定
企業規模売上高・総資産の下限(当時の米ドル額)書籍由来大型株・中型株か(絶対額は読み替えが必要)四季報・証券アプリの時価総額/売上高○(閾値は要現代化)
財務状態流動比率2倍以上書籍由来流動資産合計÷流動負債合計≥2決算短信の貸借対照表
収益の安定過去10年間の連続黒字書籍由来10期分のEPSがすべてプラスか四季報の長期業績・IRの業績推移○(10年分のデータが要る)
配当歴20年間の連続配当書籍由来無配の年が20年ないかIRの配当推移・四季報○(20年分のデータが要る)
利益成長10年でEPS3分の1以上成長書籍由来期首3年平均と期末3年平均のEPS比較四季報の長期業績・決算短信○(同上)
株価収益率PER15倍以下書籍由来予想または実績PERで確認証券アプリ・株価情報サイト
資産倍率PER×PBRが22.5以下書籍由来ミックス係数を計算証券アプリのPER・PBRを掛ける

見てのとおり、7項目すべてが機械判定可能です。マンガーの4フィルターのような定性の自問と違い、判定に主観が入りません。一方で、③④⑤は10〜20年分の長期データが必要で、「数字はどこにあるか」が実務上のハードルになります。だからこそ、上の表には確認方法とデータの在処をセットで載せました。

7基準が『賢明なる投資家』全体のどこに位置づけられるか(安全域の思想を数値に翻訳したものだという位置づけ)は、『賢明なる投資家』の要約記事を先に読むとつながりが見えます。

各基準を1つずつ——趣旨と日本株での使い方

7つの基準は「なぜその数字なのか」の趣旨とセットで覚えると、数値を現代向けに調整するときの軸がぶれません。1つずつ見ていきます。

7基準それぞれの趣旨

①企業規模——小さすぎる会社を避ける

書籍では売上高や総資産の下限が絶対額で示されていますが、これは執筆当時(1970年代)の米ドル水準で、現代にそのまま持ち込める数値ではありません。趣旨は「小さすぎる会社は業績の振れが大きく、防衛的投資家には向かない」という規模フィルタです。日本株での実務は、東証プライムの大型・中型株を目安にするか、時価総額で自分なりの下限(例: 1,000億円以上)を決めて機械的に運用する形になります。

つまずきやすいのは、下限を「その都度の気分」で動かすことです。気になる小型株が出てくると、下限のほうを下げて通したくなります。それをやると規模フィルタは機能しなくなるので、下限は先に紙に書き、変えるなら「なぜ変えるか」を記録してから変えます。なお、小型株を否定する基準ではありません。小型株の発掘は積極的投資家の領分であり、この基準は「手間をかけない人向けの安全設計」だと理解するのが正確です。

②流動比率2倍以上——短期の支払い余力

流動資産が流動負債の2倍以上ある状態を求めます。趣旨は、景気悪化や一時的な売上減でも資金繰りに窮しない財務の緩衝材です。決算短信の貸借対照表で流動資産合計と流動負債合計を拾えば1分で計算できます。なお、業種によって適正水準は異なり、日銭が入る小売業などは2倍未満でも回る構造があります。趣旨(支払い余力)を踏まえて、業種特性ごと落とすかどうかを決めます。

確認時の注意は2つ。第一に、銀行・保険・証券などの金融業にはこの基準は適用できません。貸借対照表の構造がそもそも違うためで、グレアムの基準群は事業会社を想定しています。第二に、流動資産の中身です。同じ流動比率2倍でも、現預金が厚い2倍と、在庫(棚卸資産)が膨らんだ2倍では意味が違います。在庫の急増は売れ残りのサインでもあるため、比率が基準を通っても中身を一目見る癖をつけると、基準の趣旨に沿った判定になります。

③過去10年間の連続黒字——収益の安定性

10期連続で最終赤字がないことを求めます。1期でも赤字があると通過できない、意外に厳しい基準です。趣旨は「一度でも赤字に転落する事業構造は、防衛的投資家が寄りかかるには不安定」という考え方です。四季報の長期業績欄か、企業IRページの業績推移で10期分のEPSを確認します。

判定で迷いやすいのは、減損や特別損失による一時的な最終赤字です。本業(営業利益)は黒字なのに、減損で最終赤字になった期をどう扱うか。書籍の基準を字義通り適用すれば×です。緩めたい場合は「最終赤字ではなく営業赤字で判定する」という変則が考えられますが、それは自分の修正であって書籍の基準ではない——この区別を記録に残した上でなら、どちらの運用にも合理性があります。

④20年間の連続配当——還元の持続力

過去20年、無配の年が1度もないことを求めます。増配であり続ける必要はなく、配当を止めなかったことが条件です。それでも7基準の中で最も通過が難しい項目で、この基準の現代日本株での扱いは後段で深掘りします。

確認の実務では、企業IRサイトの「配当情報」ページに長期の配当推移を載せている会社が多く、そこが最短ルートです。載っていない場合、過去の有価証券報告書を遡ることになり、ここが7基準の中で最も手間のかかる作業になります。手間がかかること自体に意味があり、20年分の配当履歴を自分の目で見ると、その会社が危機の年(2008年・2020年など)に何をしたかが配当の数字から読み取れます。

⑤10年でEPSが3分の1以上成長——最低限の成長

期首3年間の平均EPSと期末3年間の平均EPSを比べ、33%以上の成長を求めます。単年でなく3年平均を使うのは、景気の山谷や一時要因をならすためです。年率に直すと約3%弱で、成長株投資の感覚では「ほぼ横ばいに近い最低ライン」です。趣旨は成長の追求ではなく、実質的に縮んでいる企業の排除にあります。

計算例を1つ。10年前から3年間の平均EPSが100円、直近3年間の平均EPSが140円なら、成長率は40%で通過です。注意点は自社株買いの影響で、発行済株式数が減るとEPSは利益が伸びなくても増えます。基準としてはそれでも通過(株主にとってEPS成長は実利)ですが、「事業が成長したのか、株数が減ったのか」は分けて認識しておくと、④や⑥の判定と組み合わせるときに解像度が上がります。

⑥PER15倍以下——収益に対する価格の上限

利益に対して払う価格の上限を15倍に置きます。細部まで言うと、書籍では単年の利益ではなく過去数年の平均収益に対する倍率で見る流儀が示されており、一時的な好業績でPERが低く見える銘柄への防波堤になっています。日本株では、証券アプリの実績PERに加えて「その利益は一時要因で膨らんでいないか」を決算短信で一目確認すると、書籍の趣旨に近づきます。

⑦PER×PBRが22.5以下——ミックス係数

第6基準(PER15倍)と「PBR1.5倍以下」を掛け合わせた複合基準で、15×1.5=22.5がこの数値の由来です。片方が高くても、もう片方が十分低ければ通す——利益面と資産面の割安さを1つの数字に統合した設計で、日本の個人投資家の間ではミックス係数の名前で定着しています。

この式を変形すると、理論上の上限株価 √(22.5×EPS×BPS) が導けます。いわゆるグレアム数で、ミックス係数と同じものを株価の側から見た表現です。

実践者の使い方として、青島周一氏 (@syuichiao89) が「小型割安株の選定においては、ミックス係数(PER×PBR)を重要視することが多い」としつつ、PBR=PER×ROEの分解や自己資本比率も併せて見ると発信しているように、ミックス係数を入口にして質の確認を重ねる運用が現実的です。単独の万能指標として使うものではありません。

積極的投資家側の基準——7基準の外にあるもの

補足として、7つの基準は防衛的投資家向けであり、積極的投資家には別の道具立てが用意されていることに触れておきます。書籍で積極的投資家向けに示されるのは、より緩い数値で広く網を張り、個別の調査で絞る方法です。その極端な形が、時価総額が正味流動資産(流動資産−総負債)の3分の2を下回る銘柄を拾うネットネット株です。

7基準とネットネット株は、同じ安全域の思想から出た別方向の実装です。7基準が「堅実な会社を適正以下の価格で」なら、ネットネット株は「会社の中身を問わず、清算価値より安ければ」という割り切りになります。現在の日本株にネットネット株が何銘柄あるかは別記事で機械集計しています。自分が防衛的か積極的かで、使う道具を選んでください。

手動採点表——保有株を7点満点で点検する

7基準を各1点、合計7点満点の採点表にします。目的は銘柄の優劣判定ではなく、保有株がグレアムの物差しでどう見えるかを自分の手で確認することです。

7点満点の手動採点表

#基準確認する数字判定
企業規模時価総額(自分の下限を先に決める)○/×/1
流動比率2倍流動資産÷流動負債○/×/1
10年黒字10期分のEPS○/×/?/1
20年連続配当20年分の配当実績○/×/?/1
10年EPS成長33%期首3年平均と期末3年平均○/×/?/1
PER15倍以下PER○/×/1
ミックス係数22.5以下PER×PBR○/×/1

運用ルールは2つ。データが確認できなかった項目は「?」として0点扱いにすること(判定できない=通過ではありません)。そして、判定に使った数字と確認日をメモに残すことです。数字の入手元まで書いておくと、次回の点検が数分で終わります。

記入例: 過去局面の花王を事後的に採点すると

過去の局面に当てはめた記入例を1つ示します。過去の公開情報を事後的に整理した、基準充足度の検証目的の例示です。当該銘柄の売買を推奨するものではありません。

連続増配の長さで知られる花王(4452)を例にします。2010年代後半の局面を想定すると、④配当歴は日本企業で最も長い連続増配記録を持つ銘柄として明確に○。③10年黒字も、当期の公開情報から○が付けられます。①企業規模も大型株で○。一方、⑥PERは長年15倍を上回る水準で評価されてきた銘柄のため×が付く年が多く、PBRも高水準のため⑦ミックス係数も×になりがちです。②流動比率と⑤EPS成長は、当時の決算短信を実際に開いて計算する項目で、机上では「?」のまま残ります。

この例の仮の結果は、○3つ・×2つ・?2つの3/7点です。ここから読み取れるのは「花王が悪い」ではありません。グレアムの7基準は品質の基準ではなく、堅実さと割安さの複合基準であり、市場から品質プレミアムを付けられている銘柄は⑥⑦で落ちる、という基準の性格そのものです。高品質と基準通過は別物——採点表を使うと、この区別が数字で体感できます。

現代の日本株には厳しすぎるのか?

答えを先に言うと、④だけ突出して厳しく、残りは運用でどうにかなるというのが実務的な見立てです。

現代適用の論点

④20年連続配当は、年金基金など機関投資家の受託者責任の文脈も含む米国市場の配当文化が前提の基準です。『賢明なる投資家』の要約記事でも軽く触れましたが、ここで深掘りすると、日本市場では業績悪化時に配当を止めて内部留保を守る行動が長く一般的で、リーマンショックや2020年の危機で無配・減配を挟んだ優良企業は少なくありません。20年無配なしを機械的に適用すると、事業の質と関係なく大半が脱落します。運用の選択肢は2つで、(a) 趣旨(還元の持続力)を汲んで「10年連続配当+直近減配なし」等に緩める、(b) 基準はそのままに「④は日本では別枠」と割り切って6基準+参考情報として扱う、のどちらかです。どちらを選んだかを記録しておけば、後から検証できます。

①の絶対額も1970年代のドル建てなので現代化が必須ですが、これは「大型・中型に限る」で実務上は片づきます。③⑤は日本でもそのまま使えます。⑥⑦は使えるかどうかというより、「使った結果、勝てたのか」を検証すべき基準です。

⑥⑦を巡る現在の日本市場の環境にも触れておきます。東証がPBR1倍割れ企業に資本コストを意識した経営を要請して以降、低PBR銘柄に自社株買い・増配などの資本政策が入りやすい地合いが続いています。ミックス係数の低い銘柄群にとって、評価修正のきっかけが増えた環境と解釈できます(この解釈は本記事の見立てであり、書籍にはありません)。ただし「地合いが追い風」と「基準として勝てる」は別の命題で、後者は過去データの実測で確かめるべき問いです。

ミックス係数22.5以下という線が日本株で歴史的に機能したのかは、意見ではなくデータで答えられる問いです。この実測は別記事で公開しています。かぶ1000氏 (@kabu1000) が「ミックス係数が1倍台の株が存在する日本株はまだまだ安い」と発信しているように、日本市場には極端な低ミックス係数の銘柄が現存しており、基準の適用余地そのものは残っています。残っているからこそ、「通過した銘柄はその後どうだったか」の実測に意味があります。

もう1つの論点は、基準を通過した銘柄が安全とは限らないことです。数値基準はバリュートラップを完全には除外できません。安さに構造的な理由がないかの定性チェックは バリュートラップを見分ける7つの観察 を併用してください。グレアム自身も、基準は分散保有と組み合わせる前提で設計しています。

データが揃わないときの簡易版——5基準から始める

長期データの入手が壁になる場合、その場で判定できる基準だけの簡易版から始める方法があります。①企業規模・②流動比率・⑥PER・⑦ミックス係数の4つは、証券アプリと直近の決算短信だけで今日判定できます。③の直近数年分(4〜5期の黒字確認)を加えれば、5基準の簡易採点になります。

残る「10年黒字の完全確認・20年配当・10年EPS成長」は、四季報や有価証券報告書を遡れる週末に回す。簡易版で仮判定→完全版で確定、の2段構えにすると、「データが揃わないから何もしない」を避けられます。記録には「簡易版での判定か、完全版での判定か」を必ず書き添えます。この2つを混ぜると、後から見返したとき判定の信頼度が分からなくなるためです。

スクリーニングとの組み合わせ——候補出しは機械、確定は手動

保有株の点検ではなく「7基準で新しい候補を探す」使い方をする場合、スクリーナーで機械的に絞ってから手動で確定する2段構えが現実的です。

第1段階は無料スクリーナーです。証券会社のスクリーニング機能やJPXの無料ツールで、「時価総額(①の代用)・PER15倍以下(⑥)・PBR1.5倍以下(⑦の近似)」を入れると、母集団を数百銘柄までは機械的に絞れます。多くのスクリーナーにはミックス係数そのものの項目がないため、PER・PBRの個別条件で近似し、出てきた候補のPER×PBRを手で掛け直して22.5以下を確定します。スクリーナーの使い方全般は PER・PBR・配当利回りの3軸スクリーニング で整理しています。

第2段階が手動確認です。②流動比率は決算短信、③④⑤の長期データは四季報・IRページで、候補を1銘柄ずつ潰します。ここは自動化できない代わりに、候補が数十銘柄まで絞れていれば週末2〜3回で回り切れる分量です。

順序を逆にしない(手動項目から始めない)のがコツです。機械で絞れる条件を先に使えば、手動確認の対象は最初から少なくて済みます。

7基準が構造的に拾えないもの

基準の限界も、使う前に知っておく必要があります。7つの基準には構造的に拾えない銘柄群があります。

第一に、成長株です。⑤の「10年で33%」は最低限の確認であって、高成長企業は⑥PERの段階でほぼ確実に落ちます。グレアム基準で成長株が引っかからないのは欠陥ではなく設計です。成長への期待に高い価格を払う行為を、防衛的投資家の枠組みから意図的に排除しています。

第二に、無形資産型の企業です。ソフトウェア、ブランド、研究開発力といった無形資産は貸借対照表の簿価に十分反映されないため、この型の企業はPBRが構造的に高く出ます。事業の実態が堅実でも⑦ミックス係数で機械的に落ちる——1949年の基準が製造業・資産集約型の産業構造を前提にしていることの、現代における最大の歪みです。

第三に、上場10年未満の企業です。③④⑤は歴史の長さを求める基準なので、若い企業はデータ不足で判定不能になります。

つまり7基準の通過銘柄は、「古くからある資産集約型の堅実な安い会社」に偏ります。それを分かって使う分には問題なく、むしろ自分のポートフォリオがこの型に偏っているか・全く含まないかを知る物差しにもなります。

この構造的な偏りを補う相方が、定性側の点検です。数値基準が拾えない「事業の理解」「優位の持続性」「経営陣」は、マンガーの4フィルターのセルフチェックが受け持つ領域で、7基準(数値・銘柄側)と4フィルター(定性・判断プロセス側)は同じ点検の表と裏の関係にあります。数値で絞って定性で確かめる、あるいは定性で確信のある銘柄を数値で検算する——どちらの順でも、片方だけで完結させないことが実務の要点です。

採点結果をどう記録するか

採点は記録して比較して、初めて道具になります。1銘柄1行で「日付・7項目の判定・?だった項目・使った数字の入手元」を残すのが最小構成です。

私は以前、カップ・アンド・ハンドルの形を探して四季報を全ページ手でめくったことがあります。効率だけ見れば無駄の多い作業でしたが、自分の手で全銘柄に同じ物差しを当てた経験は、スクリーナーの結果を鵜呑みにしない感覚として残りました。7基準の手動採点も同じで、最初の数銘柄は自分の手で数字を拾うことをすすめます。どの数字がどこにあり、どこで判定に迷うかを体で覚えてからツールに任せると、ツールの出力の粗にも気づけるようになります。

更新頻度の目安を表にしておきます。

項目更新タイミング手間の目安
⑥PER・⑦ミックス係数株価が大きく動いたとき・決算後1分(掛け算のみ)
②流動比率決算短信が出るたび5分
③黒字・⑤EPS成長本決算後に年1回15分
④配当歴年1回+減配・無配の発表時15分
①企業規模実質的に変わらない(初回のみ)

四半期ごとの運用は軽くて構いません。決算が出たら②⑥⑦の3つ(その場で計算できる項目)だけ更新し、判定が変わったときだけ全体を見直す。20年配当や10年黒字は年1回の確認で十分です。

📝 採点の記録には: 7基準の判定結果と売買理由をセットで記録し、四半期ごとに見返す用途には habitre が使えます。「?を潰す」宿題管理にも向いています。

限界と注意

この記事の採点表には、次の限界があります。

  • 基準充足度は売買判断ではない: 7点満点は「グレアムの物差しでどう見えるか」の表示であり、将来のリターンを保証しません。基準を満たした銘柄にも個別のリスクがあります。
  • 出典ラベル: 7つの基準の項目と閾値はすべて書籍由来です。一方、「時価総額1,000億円以上」「10年連続配当に緩める」等の現代化の数値例は本記事の運用案であり、書籍にはありません。
  • 長期データの制約: ③④⑤は10〜20年分のデータが必要で、上場から日が浅い企業には適用できません。データが取れないことと基準を満たさないことは区別して記録してください。
  • 記入例は事後解説: 花王の例は公開情報を後から整理したもので、特定時点の正確な財務数値の検証を経たものではありません。?とした項目は実際に決算短信で確認する前提です。
  • 投資助言ではない: 本記事は一般的な投資教育を目的としており、特定銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。

まとめ:まず1銘柄、②⑥⑦の3つから

グレアムの7つの基準は、防衛的投資家のための機械判定できる物差しです。全部を一度にやる必要はありません。

  1. 今日できる3つから: 保有株1銘柄の流動比率(②)・PER(⑥)・ミックス係数(⑦)はその場で計算できます。まず3項目だけ判定してみる。
  2. 長期データの3つは週末に: 10年黒字(③)・20年配当(④)・EPS成長(⑤)は四季報かIRページで週末にまとめて確認する。?は0点として残す。
  3. 判定を記録して次の決算で更新する: 点数の推移が、自分の保有株の性格と、グレアム基準の現代日本株での効き方を教えてくれます。

この採点表は、7基準という75年前の物差しを「信じるか捨てるか」の二択から、「測って・記録して・自分の市場で確かめる」に変えるための道具です。基準そのものの有効性が気になった人は、ミックス係数の実測検証が次の読み物です。通過銘柄がその後どう動いたかを、感想ではなくデータで確認できます。

書誌情報

  • 『賢明なる投資家──割安株の見つけ方とバリュー投資を成功させる方法』ベンジャミン・グレアム著、土光篤洋監修、パンローリング。書籍ページ(Amazon) — 7つの基準の出典。

// faq

よくある質問

Q. ミックス係数とは何ですか?

A. PERとPBRを掛け合わせた値のことで、グレアムの第7基準に由来します。『賢明なる投資家』では PER×PBR が22.5以下であることが防衛的投資家の目安とされました。PER15倍×PBR1.5倍=22.5がこの数値の由来です。

Q. グレアムの7つの基準を全て満たす日本株はどのくらいありますか?

A. 非常に少ないとされます。最大の絞り込み要因は④の20年連続配当で、減配を挟む企業が多い日本市場では通過が困難です。正確な通過銘柄数は実測でしか分からないため、ミックス係数については実データでの検証を別記事で公開しています。

Q. 流動比率はどこで確認できますか?

A. 決算短信の貸借対照表で、流動資産合計を流動負債合計で割れば算出できます。四季報や証券アプリの財務欄にも掲載されています。グレアムの基準は2倍以上で、短期の支払い能力に十分な余裕がある状態を指します。

Q. 7つの基準は積極的投資家にも適用されますか?

A. いいえ、7つの基準は防衛的投資家(手間を最小化したい人)向けの設計です。グレアムは積極的投資家に対しては、より緩い数値で広く網を張り、個別の調査で絞り込む別のアプローチを示しています。自分がどちらの型かを先に決めるのが前提になります。

Q. 採点で7点満点なら買ってもいいということですか?

A. いいえ。採点表が示すのは基準充足度であって、売買の判断ではありません。満点でも株価の上昇は保証されず、基準を満たした銘柄にも固有のリスクがあります。採点は「保有株がグレアムの物差しでどう見えるか」を知るための道具です。