// technical
「3日続伸したら次の日は下がる」は本当か|JPX3470銘柄で実測検証
by @kabueng55
3日続けて株価が上がった。「そろそろ反落するんじゃないか」「いや、モメンタムがあるから続くかもしれない」——こんな迷いを感じたことのある投資家は多いはずです。保有中の銘柄が続伸したとき、利確すべきかホールドすべきかの判断を迷う場面は、誰しも経験することです。
「3日続伸したら次の日は下がる」という通説は、短期逆張りの根拠としてよく語られてきました。では実際のところ、データはどう示しているのか。
現存JPX内国株3,470銘柄・10年分(2015-2024年)の日足データで実測しました。
「3日続伸で下がる」という通説の起源
この種の通説がなぜ広まるのかを先に考えておくことが、検証結果を正しく読むために重要です。
ひとつは記憶の非対称性です。3日続伸の後に下落した出来事は「やっぱり下がった」と強く記憶に残ります。一方、続伸のまま4日目も上がった場合は「たまたま続いた」と軽く流される。人間の脳は「予想通りだった体験」をより鮮明に保存するため、特定のパターンへの信念が強化されやすくなります。
もうひとつは確率的な引力です。株価の変動には平均回帰の性質があるとされており、短期的に大きく動いた後には元の水準に戻る動きが起きやすいという考え方があります。この概念を簡略化して「続伸の後は下がる」と解釈されてきた側面があります。
ただし「そう感じる」ことと「実際にそうなっている」ことは別です。感覚を数字で確かめる作業が必要な理由がここにあります。
Xでも「3日続落の翌日はどうなる?」というアンケートが注目を集めており、「反発する」「続落する」と意見が分かれているのが実態です(daisuke|検証ノート(@kabueng55)、2026年6月)。同じ問いを続伸側から立てたのが本検証です。
検証の設計と測り方

対象と期間
- 対象: 2026年時点で上場している現存JPX内国株3,470銘柄
- 期間: 2015年1月〜2024年12月(約10年・日足)
- 限界: 上場廃止になった銘柄は含まれません(生存バイアス)
3日続伸の定義
3営業日連続で終値が前日終値を上回った日を「3日続伸シグナル」と定義しました。
up[k] = close[k] > close[k-1]
シグナル日 = up[i] and up[i-1] and up[i-2]
同一銘柄で10営業日以内に再シグナルが出た場合は二重計上を避けてスキップしています。5日続伸のような「3日続伸を内包する期間」が重複してカウントされることを防ぐための処理です。
起点と測定方法
起点はシグナルを確認した日の終値です。その日の終値から翌1日後・翌5日後・翌10日後の終値を比べて値動きを計算しています。
「終値で買えない(引け後に判断して翌日寄りで入る場合)」という現実の約定タイミングとは異なります。この点は記事末で詳しく触れます。
比較対象
「3日続伸でない日」約700万件を通常日(ベース)として比較しました。同じ期間・同じ銘柄プールで集計しています。「通常日」にはボラティリティや時価総額の条件は付けていないため、続伸シグナルが出やすい銘柄の特性(小型グロース等)がベースにも混在しています。この点は解釈の際に留意が必要です。
実測結果
約311,301件の3日続伸シグナルを集計した結果が以下です。


翌1日:差はほぼゼロ
| 翌1日上昇率 | |
|---|---|
| 3日続伸の後 | 45.68% |
| 通常の日 | 45.69% |
| 差(Δ) | -0.01pt |
翌日の上昇率は、続伸後と通常日でほぼ同じでした。95%信頼区間は[-0.95, +0.94]でゼロをまたいでいます。「3日続伸したら翌日は下がる」という通説は、このデータでは支持されません。
翌日に限れば、続伸という事実は「下がるサイン」でも「上がるサイン」でもなかった——という結論です。
翌5日:通常より1.6ポイント低い(95%CIがゼロを含まず)
| 翌5日上昇率 | |
|---|---|
| 3日続伸の後 | 48.19% |
| 通常の日 | 49.80% |
| 差(Δ) | -1.61pt |
5営業日後(約1週間後)では、続伸後の上昇率が通常より1.61ポイント低くなりました。月ブロック・ブートストラップ(5,000回)による95%信頼区間は[-2.73, -0.52]で、ゼロを含みません。
横ばい(変化ちょうど0%)を除いた純粋な「上昇vs下落」の比較では差が-2.27ポイントに広がりました。
翌10日:さらに広がって1.96ポイント差
10営業日後(約2週間後)では差が-1.96ポイントに拡大し、95%CIも[-3.07, -0.84]でゼロを含みません。
ブロック長の感度分析(L=1,2,3,6)でも一貫してゼロを含まない結果でした。
平均リターンは?
翌5日の平均リターンは+0.12%(中央値-0.05%)。数字は一見プラスですが、通常日のベースより低く、売買コストを引いた後に利益が残るかどうかは別の話です。
結果の解釈と注意点
「翌日は下がる」は過剰な一般化
翌1日の差はほぼゼロでした。「3日続伸したら翌日は売れ」という逆張りの格言は、少なくともこのデータでは根拠を見つけられません。
続伸後も翌日の動きは五分五分に近い——これが実態です。
翌5〜10日には「伸びにくさ」の傾向
一方で、1週間〜2週間スパンでは続伸後の方が通常日より上がりにくい傾向があります。差は1〜2ポイント程度と小さいですが、統計的には無視できない水準でした。
モメンタムが一時的に高まった後、その後1〜2週間で調整する動きが含まれているとも解釈できます。もうひとつの解釈として、3日続伸の時点で短期的な買いが集中しており、その後の新規の買い手が入りにくくなっている、という需給の視点もあります。
この差は「売買で取れる差」ではない
重要な留意点が3つあります。
1. 起点が終値 シグナルを確認した日の終値が起点です。実際は「引け後に3日続伸と気づいて翌日の寄りで買う」ケースが多く、その間の値動き(ギャップ)は含まれていません。
2. 差が小さい 1〜2ポイントの差は、手数料・スプレッド・スリッページを引くと、薄い利益が消える水準です。コスト控除後の収益性は本検証では評価していません。
3. 生存バイアス 上場廃止になった銘柄は含まれていないため、実態よりやや楽観的な数字になる方向のバイアスが含まれます(生存バイアス)。
「通説と違う」を面白がれるか
自分自身も、3日続伸した銘柄を「そろそろ反落する」と感じて売ったら、その後もさらに上昇したことが何度かあります。逆に「まだ行けるはず」と持ち続けたら翌日に崩れたこともあります。どちらの経験も、そのとき記録していなければ自分の感覚に偏りがあると気づけません。
今回の検証で「翌日は下がる」が統計的に支持されないと分かっても、「じゃあ気にしなくていい」ではなく、「翌5〜10日は少し慎重に見る根拠になるかもしれない」という使い方が現実的です。
私自身、3日続伸した銘柄を「そろそろ反落する」と感じて手放したら、その後もさらに上昇したことが何度かあります。逆に「まだ行けるはず」と持ち続けたら翌日に崩れたこともあります。どちらの経験も、そのとき記録していなければ自分の感覚に偏りがあると気づけません。「通説に従ったこと」と「結果」をセットで残しておいて初めて、自分の判断の歪みが見えてきます。
翌5〜10日の傾向を実際のトレードに活かすには
差が1〜2ポイントと小さいこと、コスト控除後の検証はしていないことを踏まえると、この結果を「逆張りのサイン」として使うには慎重さが必要です。ただし、参考指標として以下のような使い方は考えられます。
保有銘柄の利確判断の補助材料として すでに保有している銘柄が3日続伸した場合、「翌1〜2週間は伸びにくい傾向がある」という情報を追加材料として利確のタイミングを検討する方法があります。ただし、個別銘柄の材料・地合い・出来高などが優先であり、この統計だけで機械的に利確するのは過信です。あくまで「やや警戒を強める」程度の位置づけが適切です。
新規エントリーを焦らない根拠として 3日続伸した銘柄に「乗り遅れた感」を感じても、翌日飛びついても翌日の動きは通常と変わらない(五分五分)という事実は、「焦らなくていい」の一つの根拠になります。1日目が五分五分なら、翌日寄り付きで飛びつく必要はなく、出来高と値動きをもう1〜2日確認してから判断する選択肢があります。
利確がいつも早すぎる人への示唆 関連記事「利確が早すぎるの直し方」では、利確の心理バイアスを扱っています。続伸後の利確判断と合わせて読むと参考になります。
「3日続落」との比較
同シリーズの「3日続落後の反発」では、翌5日でΔ+3.5ptと、ゼロを含まない統計的に有意なプラスの差が出ています。
「急落したら反発する」を同じ手法で実測したところ、東証プライムで5%以上下げた56,024件のうち翌日プラスに転じたのは51.2%と、続落後の反発は「半分強」にとどまりました(daisuke|検証ノート(@kabueng55)、2026年6月)。
この非対称性は興味深い観察です。続伸後は「伸びにくい」傾向があるのに対し、続落後は「反発しやすい」傾向がある——単純化すれば、相場の非線形な引力の表れとも解釈できます。ただし、差の大きさは続落後(+3.5pt)の方が続伸後(-1.6pt)より大きく、「逆張り」の余地は続落後の方が大きいとも読めます。どちらのパターンでも「コスト控除後の収益性」は本検証では評価していないため、実用上の有効性は記録で自分自身の実績を確かめる必要があります。
記録で自分の続伸銘柄を検証する

「通説として3日続伸後は伸びにくい傾向がある」というのは全体集計の話です。自分が実際に保有している銘柄・自分が得意とするセクター・自分が入るタイミングでは、まったく違う動きをしているかもしれません。
トレード記録をつけ始めてから、「自分が続伸で入った銘柄の翌週の勝率」を振り返れるようになりました。市場全体の数字と自分の実績が乖離していると気づいたとき、初めて「自分の手法のクセ」が見えてきます。私がトレードノートをつけ始めて最初に発見したのは、「ロットを大きく張った時だけ、続伸後にすぐ損切りしてしまっていた」という自分のパターンでした。小ロットでは3日続伸後も翌週まで握れていたのに、大ロットだと翌日の小さな下げで動揺して売ってしまっていました。数字だけでなく、そのエントリーのメモを残していたことで「ロットサイズがメンタルを変える」という自分固有のパターンが浮かび上がりました。記録がなければ、この傾向に気づくのはずっと先になっていたと思います。
続伸後に入って利益が出ているのか、損が多いのか——それを記録しないと、感覚だけで動くことになります。
市場全体の検証結果を「自分はどうか」に落とし込むには、自分のトレード履歴が必要です。本検証の数値は「3日続伸後・翌5日の全銘柄平均」ですが、あなた自身が頻繁に売買するセクター・銘柄群では、その傾向が全体平均と全く異なる場合があります。小型グロース株を主戦場にしているなら続伸後の調整が激しいかもしれないし、大型株中心なら差がほぼ無いかもしれない。それを確かめる唯一の方法が記録です。「通説を知る」ことと「自分の手法でどうなのかを知る」ことは、別々の作業として積み上げていく必要があります。
自分の続伸銘柄の利確タイミングを記録で確かめる → habitre
関連する検証記事
同じ「連続変動後の値動き」シリーズとして、逆バージョンの検証もあります。
- 「3日続落したら反発する」は本当か(翌5日でΔ+3.5pt・0を含まない)
- 急落日の翌日に買うのは有効か
- 押し目買い戦略の実測
- 「相場の通説」実測検証まとめ
よくある質問
(記事末のfrontmatter faqs参照)
3日続伸シグナルの分布はどうなっているか
311,301件のシグナルの中身を少し掘り下げてみます。
銘柄別・期間別に見ると、3日続伸シグナルが集中しやすい局面があります。地合いが良い(相場全体が上昇トレンドにある)時期は、多くの銘柄が同時に続伸するため、シグナル件数が増える傾向があります。逆に地合いの悪い時期はシグナルが減ります。
この集中の偏りは、月ブロック・ブートストラップを使った理由の一つです。日ベースでのランダムサンプリングを使うと、「同じ相場環境の銘柄が同時に動く」という時系列の相関を無視してしまい、信頼区間が実態より狭くなる(統計的有意性が過大評価される)リスクがあります。月ブロックで同じ期間内のサンプルをまとめてブートストラップすることで、この時系列相関をある程度考慮しています。
また、銘柄特性の影響も考えられます。小型・グロース銘柄は値動きが激しく、3日続伸のような連続変動が起きやすいです。一方で大型・安定銘柄は続伸後の調整も緩やかである場合が多いです。今回の検証では銘柄規模・セクターで分けた分析は行っておらず、全銘柄プールの平均的な傾向を見ています。
事前に「何を見るか」を決めた
事前に「翌5日を主要指標」と設定したことを明記しておきます。検証では「どの結果が出ても当初の設計通りに報告する」という原則を守ることが、結果の信頼性に直結します。翌1日・5日・10日の3つのホライズンを確認しましたが、事前登録した主要指標は翌5日のみです。3つを見て「最も面白い結果が出たものを主要指標と呼ぶ」という後付けの選択は、p値ハッキングの典型的なパターンです。本検証ではこれを避けるため、検証設計を固める段階で翌5日を主要指標として定めました。
データと方法論の補足
本検証の結果は2015-2024年の過去データに基づく観察です。将来の値動きを予測するものではなく、投資の判断を促すものでもありません。
統計上の差は存在しますが、差の大きさ・実用的な取引への適用可能性・コスト控除後の収益性については本検証では評価していません。個別の銘柄・タイミング・手数料体系によって結果は大きく変わります。
なお、本検証では「終値ベース」で起点を固定しています。実際の取引では「引け後に3日続伸に気づき、翌日の寄り付きで入る」ケースが多く、その間の窓(ギャップ)ぶんは計算に含まれません。また、上場廃止となった銘柄・データが不整合な銘柄は自動的に除外されているため、現存銘柄のみが対象となっています(生存バイアス)。
検証の再現性を確保するため、ランダム関数には固定シード(seed=42)を使用しています。月ブロックのブートストラップは5,000回で実施し、ブロック長L=2を基準としL=1・3・6での感度分析を合わせて実施しました。
使用データ: Yahoo Finance 日次終値(株式分割調整済み・配当除く) スクリプト: Python (pandas / numpy) + yfinance キャッシュ
// faq
よくある質問
Q. 3日続伸した翌日は下がりやすいのですか?
A. 実測では、3日続伸した翌日に上昇で終わる割合は45.68%で、通常の日の45.69%とほぼ同じでした。「翌日は下がる」という通説は、少なくともこのデータでは支持されません。ただし翌5日(約1週間後)では、続伸後48.19%に対し通常日49.80%と1.61ポイント低い差があり、95%信頼区間はゼロを含みませんでした。
Q. この検証はどうやって測りましたか?
A. 2026年時点で上場している現存JPX内国株3,470銘柄について、2015-2024年の日足で「3営業日連続で前日比プラス」を約31万件抽出しました。続伸を確認した日の終値を起点に、翌1・5・10営業日後の値動きを、3日続伸でない日(約700万件)と比較しています。
Q. 差が小さいなら逆張りは有効ではないのですか?
A. 翌5日・10日の差は1〜2ポイント前後と小さく、実際の売買では手数料・スプレッド・スリッページが加わります。起点を「終値」で測っているため、翌日の寄り付きで買う場合は値動きの一部も取れません。差が出ていることは確認できますが、コスト控除後に利益が残るかは本検証では測っておらず、逆張りの強い根拠にはなりません。
Q. 3日続伸後に持ち続けると不利ですか?
A. 「通常より伸びにくい」という観察ですが、差は1〜2ポイント程度と小さく、個別銘柄の地合いや材料次第で大きく変わります。「続伸したからすぐ利確すべき」という断言はできません。自分の記録で、続伸後に実際にどう動いたかを確認する使い方が現実的です。
Q. この検証の限界は何ですか?
A. 現存銘柄のみを対象にしているため、上場廃止になった銘柄が含まれません(生存バイアス)。比較対象の「通常日」はボラティリティなどを揃えた群ではなく、単純な条件付きの比較です。手数料やストップ高での約定可能性も考慮していません。